ある夏の日の出来事

 2021年の夏休み

灼熱の太陽の下、息子をママチャリの後ろに乗せて市役所へ向かった


息子に

「今日はあの日だよ」

と言って自転車を走らせた


「あ。マジで。」

そう言って息子はいつも通りの息子のまま私の背中にいた


市役所へ着いて

「ママ、携帯」

そう言って待合ベンチでひたすら画面を見る


私はなんの抵抗もなく書類を窓口に差し出し、不備がないかの心配をしながら職員さんのチェックを待つ


無事受理された


これから行わなくてはいけない手続きの説明を聞けば聞くほど

「あぁ、女性は大変だなぁ」

なんて思いながら職員さんの説明を必死で聞く

でもみんな流石プロフェッショナル、的確な説明のおかげでスルスル耳に入ってくる


なんだかんだで手続きを終えるのに2時間半

息子はその間一回も携帯を手放すことなく、画面を食い入るように見続けていた


朝イチで向かった市役所を出れたのは11時くらいだった

太陽はすっかり真上に上り、容赦無く光を浴びせる

おかげで自転車のサドルもすっかり熱くなり、一瞬にして汗が噴き出す


「もう終わり?帰るの?」

「ううん。次は警察署へ行って免許を書き換えなくちゃいけないの。だからそれが終わったらご飯食べに行こ。」


免許の書き換えも無事に終わり、沢山の書類を手にファミレスへ入る


いつもと変わらない様子でご飯を頬張る息子を見ながら

「何も変わらない。」

と心に言い聞かせながら書類に目を通す


さ、このあとはスケパーへ行き、いつも通りスケボーの練習だ


そんな普段通りの日常をなんとなく意識的に過ごした

いつも通りの時間に帰宅し、いつも通りのなんてことない夕飯

いつも通りにお風呂に入り、いつも通りの時間に寝かし付ける


当たり前だった日々に少しだけ未練を残し新たな一歩を踏み出したあの日


思っていたより何かと手続きが沢山あって、きっと全ての作業を完遂するのには1ヶ月はかかるんだろうな、と認識する


あの暑い夏の日、私は何を思ったか

そして息子は何を感じていたのか


「あ、そうか。今日でパパとママが結婚をやめる日だったね。」

「うん。なにか思うことはある?」

「ううん。なんにも。だって特に今までとなにも変わらないでしょ。」


今までと変わらない日々を守る

だけどどうしたって少しずつ変わっていくんだよ

でもそこはママがうまくやるからね


「今まで楽しかったね。」

そんな思い出話なんてしませんよ

前を向いて、この夏の日の出来事は息子が大きくなって、自立するであろう日に2人で振り返るんだ

それまではとにかく前へ進んで行くよ。一緒にね。


だから大丈夫

大丈夫よ

愛する息子




この富士山は、この日の富士山

力強かった、とても







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